第1章 イントロダクション
1.1 スクラムとは何か?
Section titled “1.1 スクラムとは何か?”スクラムとは、革新的なプロダクトやサービスを開発するためのアジャイルアプローチです。
- 反復的かつインクリメンタル: 1週間から1か月の期間(イテレーション)の中で、設計・構築・テストなどのすべての作業を行います。
- プロダクトバックログの活用: 優先順位付けされたアイテム一覧の中から、最も重要度の高いものから順に着手します。
- フィードバックループ: イテレーションの終わりには完成した機能のレビューを行い、ステークホルダーからのフィードバックを次の計画ややり方に反映させます。
1.2 スクラムの起源
Section titled “1.2 スクラムの起源”スクラムの背景には、日本の製造業の研究から生まれた概念があります。
- 1986年の論文: 竹内弘高氏と野中郁次郎氏が発表した「The New New Product Development Game」において、チームが一丸となって進む「ラグビー方式」が提唱されました。これは従来のバトンを渡す「リレー競走」とは対照的なアプローチです。
- ソフトウェアへの適用: 1993年にJeff Sutherland率いるチームがソフトウェア開発に適用し、その後Ken Schwaberらと共に体系化され、今日のスクラムへと発展しました。
1.3 なぜスクラムなのか?
Section titled “1.3 なぜスクラムなのか?”従来のウォーターフォールスタイルのアプローチでは、複雑なドメインにおいて単純にうまくいかないためです。
- ソフトウェア開発は複雑であり、事前に詳細な計画を立てることは困難です。
- スクラムは、事前の設計とジャストインタイムでの設計を組み合わせることで、この複雑さに対応します。
- 顧客やパートナーは、より頻繁な協業と迅速なデリバリーを求めています。
1.4 ゲノミカ社の顛末(ケーススタディ)
Section titled “1.4 ゲノミカ社の顛末(ケーススタディ)”バイオインフォマティクス企業であるゲノミカ社における、スクラム導入前後の劇的な変化を示す結果です。
| 指標 | ウォーターフォール | スクラム |
|---|---|---|
| 払った労力 | 10x | 1x |
| ベロシティ | 1x | 7x |
| 顧客満足度 | 低い | 素晴らしい |
かつては計画に多大な労力(10倍)を払っていたにもかかわらず、スクラム導入後は少ない労力で7倍の機能(ベロシティ)を生み出し、高い顧客満足度を獲得することに成功しました。
1.5 スクラムは役に立つか?(クネビンフレームワーク)
Section titled “1.5 スクラムは役に立つか?(クネビンフレームワーク)”スクラムは万能ではありません。状況に応じた向き不向きを判断するために、「クネビンフレームワーク(Cynefin framework)」が役立ちます。
スクラムが最適に機能する領域です。 物事を予測できず、正解が後からわかる創発的な領域であり、探索・学習・検査・適応を繰り返す革新的なアプローチが必要です。
専門家による分析が必要な領域です。スクラムを用いることもできますが、状況によっては他のアプローチ(シックスシグマなど)でもうまくいく可能性があります。
原因と結果がはっきりしており、正解が明らかな領域です。定義されたプロセスを繰り返すのが最も効率的であり、スクラムを用いることはできますが必須ではありません。
危機に瀕しており、すばやい対応が求められる領域です。行動を起こして状況を安定させることが最優先であり、スクラムのように計画を立ててイテレーションを回す状況ではありません。
無秩序と割り込み駆動の作業
Section titled “無秩序と割り込み駆動の作業”- 無秩序: 自分がどの領域にいるのかわからない状態です。状況を要素に分解し、それぞれを適切な領域に当てはめる必要があります。
- 割り込み駆動の作業: サポート業務など、予期せぬ割り込みが多すぎる環境では、スクラムの計画が成り立たないことがあります。このような場合は、カンバンのような流れを重視するアプローチを併用、または採用することが推奨されます。
1.6 終わりに
Section titled “1.6 終わりに”スクラムは「銀の弾丸」でも「魔法の治療薬」でもありません。
しかし、スクラムは組織の機能不全やムダを可視化してくれます。可視化された問題に対してチームが勇気を持って疑問を投げかけ、適応していくことで、従業員と顧客の満足度を大きく前進させ、価値をうまく届けることができるフレームワークです。