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第14章 スクラムのプランニングの原則

本章では、スクラムにおける「プランニング(計画づくり)」の根本的な原則について解説します。スクラムは「無計画」なわけではなく、不確実な世界でいかに現実的な計画を立て、適応していくかという明確なアプローチを持っています。

14.1 概要 & 14.2 事前にきちんと計画を作れると思うな

Section titled “14.1 概要 & 14.2 事前にきちんと計画を作れると思うな”

スクラムでの開発は、事前のプランニングをゼロにするわけではありません。事前の計画と、スプリントごとに行うジャストインタイムの計画のバランスを取ることが重要です。

  • 伝統的な予測に基づく手法(ウォーターフォールなど)では、最初から最後まで一直線に進めることを前提に詳細な計画(ガントチャートなど)を作ります。
  • しかし、ソフトウェア開発のような不確実性の高い領域において、事前に完璧な計画を作成し、それに従って作業を終わらせることは現実には不可能です。

14.3 事前のプランニングのやりすぎに注意

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事前のプランニングのやりすぎに対する警告として、「スキー」の例えが紹介されています。

  • 友人に「どうやって木にぶつからずに滑っているのか?」と聞かれた著者は、「少し先のどこかに目標を置くが、事前の計画は2ターンか3ターン分しかしない」と答えます。
  • 実際の地形は変化するため、遠くのゴールまでの詳細なルートを事前に計画しても無意味であり、かえって目の前の障害物(木)にぶつかる危険性を高めてしまいます。

14.4 プランニングの選択肢は、最終責任時点まで変更可能にする

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スクラムでは、重要な決定をできるだけ遅らせる 「最終責任時点(Last Responsible Moment:LRM)」 という原則を重視します。

  • 事前にすべてを決定するのではなく、決定を下さなければならないギリギリのタイミング(それ以上遅らせると取り返しがつかなくなる時点)まで判断を保留します。
  • これにより、より多くの情報が集まり、不確実性が下がった状態で最適な意思決定を行うことができます。

14.5 計画を守ることよりも、計画の調整や再計画を重視する

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計画は作成した瞬間に古くなります。ここで重要なのは「地図と地形」の例えです。

  • 「地図(計画)と地形(現実)が違うなら、地形を信じよ」: 計画通りに進まない場合、現実を計画に無理やり合わせようとするのではなく、現実(地形)に合わせて計画(地図)を修正しなければなりません。
  • スクラムでは、計画からの乖離を「失敗」ではなく「新しい知識の獲得(学習)」と捉え、速やかに再計画を行います。

14.6 計画の一覧をきちんと管理する

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巨大な計画(ガントチャートなど)を事前に作り込むことは、巨大な「在庫(WIP)」を抱えることと同じです。

  • 状況が変われば、その巨大な計画を修正するために莫大な労力(ムダ)が発生します。
  • スクラムでは、ジャストインタイムで必要な分だけ計画を立てることで、未検証の計画というムダな在庫を最小限に抑えます。

14.7 早めにリリース、頻繁にリリース

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スクラムでは、完成したプロダクトインクリメントを小刻みで頻繁にリリースすることを推奨しています。

  • ROI(投資収益率)の改善: 1年後にすべてを一括でリリースする(ビッグバンリリース)よりも、数ヶ月ごとに分割してリリースする方が、早い段階から収益を得ることができ、結果として全体のROIが劇的に高まります。
  • プロダクトの損益分岐点に早く到達でき、資金繰りのリスクも軽減されます。

14.8 早めに学び、必要ならピボットする

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事前にいくら予測しても、実際に作って市場に出してみるまでは正解はわかりません。

  • 構築・計測・学習のループを高速に回し、もし間違った方向に進んでいる(顧客のニーズと合っていない)と分かったら、 「ピボット(方向転換)」 する決断力が必要です。
  • サンクコスト(すでに費やした時間やお金)に縛られず、真の価値に向かって素早く方針を転換することがアジャイルの真髄です。

本章では、スクラムのプランニングにおける原則(適応、LRM、ROI重視など)を学びました。次章(第15章)では、この原則をベースにした「マルチレベルプランニング(ポートフォリオ、プロダクト、リリース、スプリントの各階層での計画)」について詳しく掘り下げます。