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第20章 スプリントの実施

本章では、スプリントプランニングで立てた計画をもとに、開発チームが実際に作業を行い、出荷判断可能なプロダクトインクリメントをデリバリーするまでの「スプリントの実施」フェーズについて解説します。

20.1 概要 & 20.2 スプリントプランニング

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スプリントの実施は、それ自体がひとつの「ミニプロジェクト」のようなものです。 スプリントプランニングで作成された「スプリントゴール」と「スプリントバックログ」をインプットとして、開発チームは自己組織化して作業を進めます。

スプリントを成功させるためには、作業の流れ(フロー)をスムーズに保つことが重要です。

並列作業とスウォーミング(群がる)

Section titled “並列作業とスウォーミング(群がる)”
  • 一人のメンバーが複数のアイテムを同時に抱え込む(マルチタスク)と、コンテキストスイッチによるムダが発生し、結局どれも完成しなくなります。
  • スクラムでは、**「スウォーミング(群がる)」**というアプローチを取ります。チーム全体で同時に少ないアイテムに集中して取り組み、次々と「完了」させていく手法です。

どの作業から着手・完了させるべきか

Section titled “どの作業から着手・完了させるべきか”
  • 最も優先順位の高いアイテムから着手し、できるだけ早く「完了(完成の定義を満たした状態)」に持ち込むことに注力します。
  • 90%完成したアイテムが10個あるよりも、100%完成したアイテムが1個ある方が、スプリントにおいては価値があります。
  • マネージャーがタスクを割り当てるのではありません。
  • スプリントの実施中は、開発チームのメンバー自身が自発的に「次にどの作業をやるか」を選択(引き受け)します。

チームの活動を同期し、日々のフローを調整するために、毎日15分のタイムボックスで「デイリースクラム」を実施します。 これは単なる進捗報告会ではなく、スプリントゴール達成に向けた「1日ごとの計画見直し」の場です。

20.5 タスクの実行(技術的プラクティス)

Section titled “20.5 タスクの実行(技術的プラクティス)”

品質を保ちながら高速に開発を進めるためには、アジャイルな技術的プラクティス(特にエクストリームプログラミング:XPの手法)が不可欠です。

  • 継続的インテグレーション(CI)
  • 自動テスト
  • リファクタリング
  • テスト駆動開発(TDD)
  • ペアプログラミング

スプリント中の進捗や状態をチーム内外に透過的に伝えるために、視覚的なツールを活用します。

  • 「TODO(未着手)」「進行中」「完了」などの列を持ち、タスクの状態を一目でわかるようにしたボードです。付箋やカンバンツールがよく使われます。

スプリントバーンダウンチャート

Section titled “スプリントバーンダウンチャート”
  • 縦軸に「タスクの残作業時間(またはポイント)」、横軸に「スプリントの日数」を取り、作業が減っていく様子を示すグラフです。
  • チームが予定通りに作業を消化できているかを日々確認できます。

スプリントバーンアップチャート

Section titled “スプリントバーンアップチャート”
  • スプリント中に作業(スコープ)が追加・変更された場合、バーンダウンチャートでは「進捗が遅れているのか、作業が増えたのか」が分かりにくくなります。
  • バーンアップチャートは、「完了した作業の累積」と「総作業量」の2本の線を引くため、スコープの変動とチームの進捗を明確に区別して可視化できます。

スプリントの実施は決してカオスではありません。スウォーミングによるWIPの制限、デイリースクラムでの調整、強固な技術的プラクティス、そして視覚的なタスクボードを用いることで、持続可能なペースで価値を提供し続けることができます。

次章では、スプリントの最後に行う成果物の確認イベント「スプリントレビュー」について説明します。