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4.6 保守性テスト (Maintainability Testing)

「保守性テスト(Maintainability Testing)」 の主な目的は、システムやソフトウェアが、将来的な変更(修正、機能拡張、環境への適応など)をどれだけ容易に行えるかを評価することです。

保守性が低いシステムは、少しのコード変更で予期せぬバグ(デグレード)を発生させたり、修正に莫大な時間とコストがかかる「技術的負債」を抱え込みやすくなります。テクニカルテストアナリスト(TTA)は、開発の初期段階から静的・動的なアプローチを駆使して、製品の長期的な持続可能性(サステナビリティ)を検証する役割を担います。


保守性を構成する5つの副特性とテスト

Section titled “保守性を構成する5つの副特性とテスト”

ISO/IEC 25010の品質モデルに基づき、シラバスでは保守性を以下の5つの側面(副特性)に分解して評価します。

システムの一箇所の変更が、他のコンポーネントに与える影響を最小限に抑えられる度合い(疎結合であるか)を検証します。

  • TTAの視点: 密結合なスパゲッティコードになっていないか、影響範囲が局所化されているかをアーキテクチャレビューや静的解析ツールで評価します。

あるコンポーネントが、他のシステムや異なる機能の構築において、どれだけ容易に資産として再利用できるかを検証します。

  • TTAの視点: 共通ライブラリやコンポーネントが特定の文脈に依存しすぎていないか、汎用的に設計されているかを確認します。

不具合が発生した際、その原因(バグの箇所)や影響範囲をどれだけ迅速に「調査・特定できるか」を検証します。

  • TTAの視点: 適切なアプリケーションログが分かりやすく出力されているか、ソースコードが可読性の高い状態に保たれているかを検証します。

コードの修正や機能の追加を行う際、バグを新しく作り込むことなく、どれだけ確実かつ迅速に「変更を適用できるか」を検証します。

  • TTAの視点: 複雑度の高いコードや重複コードを排除し、安全にコードを書き換えられる状態を維持できているかを評価します。

変更されたソフトウェアに対して、どれだけ容易にテストを実行し、正しさを確認できるかを検証します。

  • TTAの視点: 自動テストが書きやすい設計になっているか(APIやインターフェースの分離)、環境の初期化やモックの差し替えがスムーズに行えるかを評価します。

保守性テストの主要なアプローチ

Section titled “保守性テストの主要なアプローチ”

保守性テストは、実際にシステムを動かす「動的テスト」よりも、設計書やソースコードを対象とする 「静的テスト」 が大きな割合を占めるのが特徴です。

1. 静的解析(コードメトリクスの測定)

Section titled “1. 静的解析(コードメトリクスの測定)”

ツールを用いてソースコードの構造を定量的に測定し、保守性の低い「危険なコード(コード臭)」を早期に検出します。TTAが注目すべき代表的なメトリクスは以下の通りです。

  • サイクロマティック複雑度(循環複雑度): コード内の分岐(if文やループなど)の多さを表す指標。値が高すぎるコードは、テスト性が著しく低下します。
  • 結合度と内聚度(コヒージョン): コンポーネント間の依存関係が薄く(疎結合)、1つのクラス・関数が1つの責任に集中しているか(高内聚)を測定します。
  • 重複コードの割合: コピペされたコードは保守性の天敵です。一箇所の修正漏れがバグの原因となるため、ツールのスキャンによって徹底的に排除します。

2. アーキテクチャおよびコードレビュー

Section titled “2. アーキテクチャおよびコードレビュー”

チェックリストを活用し、開発チームが定めた「コーディング規約」に従っているか、将来の変更に耐えうる拡張性のあるデザインパターン(抽象化など)が適用されているかをレビューします。

実際にソフトウェアに変更を加え、そのプロセスを測定する実験的なアプローチです。

  • アプローチ: テスト環境において、特定のコンポーネントを最新バージョンに置き換えたり、特定の機能を開発者が実際に修正したりする作業を行います。その際、「修正の完了までにかかった時間」や「影響範囲の特定にかかった手順」を計測し、目標値(SLA)を達成できているかを実証します。